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"La Revuo Orienta"(日本エスペラント学会,sep. 2000)

日本仏教エスペランチスト連盟のめざすもの

山口真一

日本仏教エスペランチスト連盟(以下JBLEと略称)の創立は1931年にさかのぼる.実際には,それ以前から仏教系大学のエスペラント会による活動があるので,日本での仏教エスペラント運動の歴史はおよそ80年を数える.

そのめざすところを一言でいうならば,「エスペラントによって仏教を広め,仏教者にエスペラントへの理解を求める」ということにつきる.しかし,この場合エスペラントは仏教普及のための単なる手段・道具というにとどまらず,エスペラント運動の持つ価値理念が仏教の思想と相関している,そこに仏教者がエスペラントに注目する必然性がある.すなわち,民族・国家・階級・政治的立場などを「世間虚仮」として相対化し,全人類的立場に立ち共生・相互共存するいのちを確立することが仏教の目的であり,その視点からエスペラント運動は仏教者の共感をよぶのである.

現在JBLEの力はそれほど大きいものではない.会員数は約70名(購読会員含む).年4回機関誌(La Japana Budhano)を発行し,308号を数えるに至った.催しとしては,日本エスペラント大会時での年次総会を兼ねた仏教分科会,およびザメンホフ祭と釈尊成道会を兼ねたBudhana Festo.このようにささやかな活動ではあるが,80年の歴史の中で蓄積された成果は決して小さなものではない.例えば,翻訳された経典や論書は未や抄訳も含めれば100点に近く,単行本として出版されたものだけでも10点以上ある.このような成果の一つとして,1984年に仏教伝道協会から発行されたエスペラント版仏教聖典(Instruoj de Budho)がある.この聖典は膨大な仏教経典の中から抜粋編集されたものであるが,世界各国の言語に翻訳されており,エスペラントはそのうちで10番目の言語となった.

今後の活動の方針としては以下の5点が挙げられる.

(1)今までに翻訳された経典・論書のテキストデータ化をすすめる.
(2)こうして,いつでも誰にでも利用可能なかたちにしておいて,現在の到達点の上に立って不十分な翻訳を改めるとともに,未翻訳の経典の翻訳をすすめる.
(3)情報発信の手段としてのインターネットの利用.特にWebページの開設.
(4)エスペラント版『仏教入門』を早期に発行する.
(5)世界に散在する仏教徒エスペランチストとの連絡を保ちつつ,国際仏教エスペラント連盟の再建を展望する.

なお,JBLEは特定の教団との結びつきはなく,どのような立場の方でも加入することができるので,関心のある方は筆者へ連絡を.

(2005年9月19日付記)
上記5点の方針のうち、(3)(4)(5)は達成することをえた。(1)(2)はある意味で永遠の課題である。


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